「知りたい」のちから
自国を離れて暮らす家族の悩みの種は子供の学校とことばのこと。子供の年齢や性格、渡航先の事情で選択は様々です。
我が家の娘達も幼稚園から大学まで転校続きで、国内外での総校数は通常の倍!半分が現地校でそれぞれ必死でした。
危機的な環境に陥るたびに感じたのは、「これを知りたい・何とか理解したい」という気持ちが持つ力です。
そこをいかに上手く刺激できるかが学習の鍵であることを各地で痛感しました。
5歳児の学習
最初の難関は5歳の娘を連れてイタリアに入った頃。生活のことばが全く理解できない状態に母子で窮地に陥りました。何とかしないと共倒れです。
その気になれば驚く程集中するのに興味がなければ見向きもしない子供の習性。無理強いは逆効果だし労力の無駄です。 市販品を探しましたが合うものは無し。何とか興味をひくものが必要でした。
この頃頼りとしていたのは日本で買ったイタリア語入門の本。娘は挨拶やフレーズのCDを聞き丸ごと覚えていましたが、丸覚えは応用がきかないのです。
ことばを操るにはひとつひとつの単語を分けて考え、語彙を増やすことが不可欠でした。5歳の子供にできることは何?とにかく子供まわりを観察しました。
娘に話しかけてくれる人の声のかけ方や公園にいる子供同士が交わす会話...。
名前は?何歳?それは何?どこ行くの?話しかける時自然に使うのは質問です。大人は5W1Hを理解し使い分けますが、子供は無意識です。ここを分かりやすく見せれば興味を持つかもしれません。
疑問詞を ひとつずつ取りあげて 意味と例文を並べたら使いかたがわかるかも。試しにちょこっと書き出してみました。見せると興味津々、掴みは上々です。
単語の並べ方は、頭に浮かぶ光景と文字が重なる形が良さそうです。自然・果物など仲間ごとに10語程のまとまりにして書いてみるとこれも違和感がない様子。
形容詞や動詞も、対義語・同義語を組み合わせることで仲間を作って記入です。覚えるのも確かめるのもまとまりで。 ABC順ではないので感覚的に開けます。
書き込んだのは例文と単語の原型だけ。絵本でも教科書でもない手帳でしたが、いつでも安心して手に取り眺めていられるこの手帳は、娘にとっては知りたいこと満載のサバイバル手帳となりました。現地校に入って慣れるまでいつも持ち歩いた大切な思い出の品となっています。
サバイバルの単語帳
「これ何だっけ?」学習には付きもののこの感覚。これを放置しないことだけが歩みを速める極意です。
学習中、探し物にあてる時間は少なくありません。教材が複数あると尚更です。これに似た文をどこかで見たような...、どこかに書いたけどどこだったかな...。大人は索引や検索で探すことができますが、小さい子供はこれが苦手です。
子供の感覚に合わせて作った単語帳は、子供が自分で開いて確認ができました。気になることを探すのが楽しそうです。5歳でも知りたいことを学びたいんだ、文字を覚えたての子供であっても合う教材さえあれば自主的に学習できるんだ!改めてそう実感した瞬間でした。
他言語の学習
他国語の学習というのは、馴染みのないことばを自分の知っていることや感覚・感情とひとつずつ繋いでいく作業です。段取り良く進めるのはなかなか困難で、努力が空回りすることもしばしば。
同じ事の繰り返しは歯がゆさ倍増です。これまでどのくらいの人が苦労してきてこれからどれくらいの人が同じような思いをするのでしょう。
何か適した形がある筈だと思いました。自分が欲しかったものを形にできれば、きっと誰かの助けになる筈。そう信じて作成したのが「Tango」 という手帳です。
覚えることがありすぎて混乱しがちな学習初期に、自分のペースでしっかり向き合えるものを目指しました。
今思うこと
日本語学習向け Tango en-jp ふり仮名・ローマ字読み付き |